
研究は、注意深く物事を観察し、データを収集し、適切な方法で解析された結果を誠実に報告しているという「信頼」によって成り立っています。このような「信頼」は、スポーツにおいて選手や審判がルールを守り、安全に競技を進めることと共通しています。もし選手が故意に危険な行為をすれば、相手をケガさせてしまい、スポーツそのものの楽しさが失われてしまいます。このようなスポーツにおける心得は、みなさんすでに身についていることかと思います。
研究においても同じように、「信頼」を損なう行為は、研究活動そのもののしくみを成り立たなくさせます。そのため、研究における心得を知り、社会から信頼を得たうえで研究を進めることが大切です。特に研究によって生み出される新たな価値が我々の社会に大きな影響を与えるような現代では、実際に研究をする人もその研究の成果によって恩恵を受ける人も、この心得を十分に理解していることが大切です。社会に出て仕事をするうえでも、この教材で学ぶ研究不正を理解し、誠実に仕事をすることは、その仕事の発展や信頼性の向上に欠かせません。
これまでの研究において、残念ながらこのような心得を理解しないで進められた事例があったのは事実です。法律に反するような研究活動があってはならないというのは分かりやすいですが、何が研究活動における不正行為かということは、広く一般には認識されていません。2014年に文部科学省から出された「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」では、ねつ造、改ざん、盗用という3つが研究における「特定不正行為」と定義されています。以下にその定義と具体例を示します。
- ねつ造:存在しないデータ、研究結果等を作成すること。
例えば、実際に行っていない実験データを作成することや実際に行っていてもそのデータに架空データを加えることなどがあります。
- 改ざん:研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること。
例えば、実際の行った実験方法とは異なる方法を記述することや得られたデータをあたかもきれいなデータが取れたように変更する場合が含まれます。特にデジタル画像データを扱う研究では、不適切に画像処理を行うことや画像を貼り合せることであたかも一つの最終画像のように加工することがないよう注意が必要です。
- 盗用:他の研究者のアイデア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を当該研究者の了解又は適切な表示なく流用すること。
例えば、インターネット上の他人の論文をコピー&ペースト(いわゆるコピペ)することや他人のデータを無断で使用すること、データや画像、研究結果や研究アイデアなどをあたかも自分のもののように発表することなどが挙げられます。
しかし、これら3つの定義に当てはまらない研究が、すべて誠実な研究というわけではありません。研究データを一定期間保管せず、データの開示に応じない場合や、先行研究を適切に引用しない場合は、問題となることもあり、研究への信頼性を低下させます。また、生徒の研究の中には先行研究を十分調べなかったため、過去に例があるにもかかわらず、独自のアイデアだと思って研究を進めている場合があります。研究発表などを通して指摘を受けた場合には、誠実に対応しましょう。指摘された先行研究を無視する態度は、誠実な研究活動とは言えません。
では、この定義の中に、うっかりミスは入るのでしょうか? 通常、研究不正とは、故意に誤った行為を行った場合や、研究に携わる者として求められる基本的な注意を著しく怠った場合に該当するとされています。つまり、研究に携わる以上、最低限知っておくべきことを知らなかった、という理由は正当な言い訳にはなりません。誠実な研究活動を行うために、この教材を通して、研究における心得を学びましょう。
